準備のいらない読書会とうわさの「アクティブ・ブック・ダイアローグ」でPMBOK第7版をみんなで読んでみた
みなさんは「アクティブ・ブック・ダイアローグ®(以下ABD)」をご存じですか?
ABDとはグループで行うワークショップ形式の読書法です。1冊の本を分割して分担して読み、それぞれで要約をします。要約したものをその場で発表し、全員で本の内容について話し合う、という一連の流れを辿ることで、いろんな人の考えに触れられると同時に能動的な気づきや学びが得られます。
先日「TSD超参加型読書会~アクティブ・ブック・ダイアローグで読む『PMBOK®ガイド第7版』~」を開催しました。今回は読書会の様子をレポートします!
なぜ「PMBOK®ガイド第7版」を取り上げたのか?
PMBOK®ガイドとは、PMBOKはプロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめた、いわばプロジェクトマネジメントのバイブルと呼ぶべき本です。1987年にアメリカの非営利団体PMIが「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」という名称のガイドブックで発表し、今ではプロジェクトマネジメントの事実上の世界標準として各国に浸透しています。そんなPMBOKガイドの日本語最新版が2021年11月に発売されました。
PMBOKといえば分厚い本というイメージが強いですが、第7版は以前と比較して500ページ減と大幅リニューアルがされ、界隈がざわつくほど進化したと言われています。なぜかと言うと、知識体系のコンセプトそのものがガラッと変わったからです。従来は「成果物を確実に届けること」に主眼が置かれていましたが、第7版では 「価値を届けること」 を重視した内容になりました。そのためPMBOKの構成もプロセスが細かく書いてあるガイドラインから、原理・原則を定め幅広い状況に効率的に適用できるようなガイドラインに変わりました。
PMBOKが対象とするプロジェクトはシステム開発などのITプロジェクトに限定されませんが、もとよりソフトウェアエンジニアリングの実践にプロジェクト管理は不可欠です。Web / ITエンジニアリング事業を担うTSDでは、プロジェクトマネジメント知識体系はお仕事に直結する重要知識。ということで、最新情報にキャッチアップすべく、PMBOK®ガイド第7版から「プロジェクトマネジメント標準」の部分をABDしてみました。
手ぶらでOK!ABD読書会の様子
当日はTSDのシステムディレクターを中心に構成されたメンバー5人で行いました。今回はコロナ禍ということもあり、オンラインで開催しました。
ABDの流れは大きく分けて、「オープニング」「メイン」「エンディング」の3パートです。
1. オープニング
オープニングでは読書前の準備として「オリエンテーション」と「チェックイン」を行います。公式の手順ではチェックインが先ですが、今回はオリエンテーションから行いました。
オリエンテーション
「オリエンテーション」では、参加メンバーに対してABDの紹介や、読書会全体の流れを共有します。企画趣旨や課題図書の選定理由、タイムスケジュールを参加者に伝えました。
チェックイン
続く「チェックイン」では、アイスブレイクで話しやすい雰囲気作りを行い、以降に行うグループディスカッションを円滑にします。当日は1人1分程度で自分の名前と今の気持ち、PMBOK読書経験の有無などを話しました。
ここまで準備が整ったら、ABDの主軸である「メイン」に進みます。
2. メイン
メインは以下の3つのパートに分かれます。
- サマライズ
- 個々に分かれ、本を要約するパートです
- 本の分担発表と要約のやり方もここで説明します
- リレー・プレゼン
- リレー形式で要約文を発表します
- 最後の数分で全員の要約に目を通し、疑問に思ったことや共感したことが掲載されてる要約にマークを付けます
- ダイアログ
- 本の要約(サマリー)を見ながら、感想や気づきを対話します
サマライズ
サマライズでは担当パートごとに読んで、サマリーを作成します。今回はオンライン開催だったので、サマリーはPowerPointを共同編集しました。担当者ごとにセクションを作成し、セクション内でスライドを追加する形式をとりました。
当日は要約の粒度などを特に指定せず自由に行ってもらいましたが、ABDに慣れていないとかなり手間取ってしまうので、初めての参加者が多い場合は要約項目まできっちり定めると進行がスムーズになりそうです。
リレー・プレゼン
1人3分の持ち時間で、作成した資料をもとにプレゼンを行います。
インプットしたものをすぐアウトプットするため記憶の定着が強固になると共に、要約力やプレゼンテーション力の向上が期待できます。実際にやってみて、本を短時間で要約し、要点を制限時間内に共有するというのはとても難しいと感じました。これらの力は普段の業務でも求められることなので、トレーニングとしてもABDは有効だと思います。
本来ではここで「ギャラリーウォーク」と呼ばれる、サマリーを俯瞰し、気になるところにマークをつける作業を行うのですが、今回は時間がかなり押してしまったためスキップしました。
例えばマークのルールに「わかったときや、いいね!と思ったときは星マーク」、「理解できなかったことには三角マーク」というルールを設定したとします。その前提でギャラリーウォークを行うと、グループメンバーの感情が動いたスライドを可視化することができます。
ダイアログ
ダイアログでは、参加者がマークを付けたところに注目しながら、改めて自分がその場でみんなに問いかけたいことや、気づいたこと・思ったことなどを付箋に書き出します。そして、それらを眺めながらグループ全員で対話をします。
今回は時間がなかったため、すべて口頭形式で行いました。出た意見としては、
- 「価値実現システム」のコンセプトに気づきがあった
- 個人の能力や善意に頼るのではなくて、バリューを届ける仕組み=ロジスティクスを組織として整備する
- 日本では、現場の努力と根性で頑張る方向に行きがち(「失敗の本質」を思い出す)
- PMBOKの内容について、プロジェクトマネジメント経験が浅い人は理解の難しい部分が多くあった
- 英文翻訳調だからという理由もあるが、出てくる言葉が難しかった
- 今回新しく登場した「スチュワードシップ」の言葉の意味はわかったけど、まだ腹落ちしない
- 事例を交えながら要約できるプロジェクトマネジメント経験者の参加で、情報の解像度がぐっと上がった
- 経験に当てはめながら内容を咀嚼できる
などがありました。
3. エンディング
最後は「チェックアウト」です。今の気持ちやABDを行った感想をシェアします。読み解きながらスライドに落とし込むのは難しい、大変だったけどやりがいがあった、という声が上がりました。
密度がかなり濃い時間を過ごしたため、満足感はかなり高い印象でした。
ABDを実践してみて
ABDは数人で分担して1冊を読むため、インプットとアウトプットはもちろんフィードバックまでを短時間で行えるのが魅力だと思いました。短い時間で集中して取り組めるため、グループで共通知識として持っておきたい本だけど、回し読みは時間もかかるし諸般の事情で難しい…と思われる場合にもおすすめです。
またリアルタイムにインプットからアウトプットまでを一気通貫で行うので、深く記憶に定着するのと同時に、直後の対話で他人の考え方に触れる良い機会となるでしょう。副次的な効果として、集中力・要約力・発表力・コミュニケーション力・対話力・リーダシップなどなど…多面的な成長も見込めます。
なにより、本を読んですぐの熱量をその場に共有できるのが楽しいです!グループの共通言語ができるため、チームビルディングの一環としても使えます。今回はPMBOKとちょっと内容が堅めで難しい本でしたが、本によってはさくっと読んでクイックに開催できそうです。定期開催することで、チームの関係性に良い影響を与えるかもしれません。
良いことづくしの超参加型読書会、みなさんも開催してみませんか?
この記事を書いた人
古川
犬を2匹飼っています🐶🐶
ミツエーテックラジオでもスピーカーをしています。ぜひ聞いてください!
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